介護用ロボットスーツは、介護現場の「揺れる想い」を汲み取れるのか?
介護用のロボットスーツが販売されました。
介護施設向け「ロボットスーツ」が発売に!労働環境改善や人手不足解消に期待 - IRORIO(イロリオ)
さて、みなさんはどのように思うでしょうか。
僕が懸念したのは、以下の2点です。
<腕力>に頼る
介護とは、本人の意志を支えるものです。
動きたい方向に、本人が動けるように支えます。
また、動きたくない気持ちが、本人に著しい不利益をもたらす場合、なんとか動いてもらうように、手を替え品を替え言葉を変え、動きたくなるような気持ちになってもらいます。
しかし、介護用ロボットスーツによって支えられるのは、介助者の腕力です。実際には、脚力や背筋力も支えられますが、象徴的に<腕力>と書いておきます。
本人が持っている力や、なんらかの理由で動きたくない気持ちを無視して、<腕力>でもって動かすことを容易にします。
それは、本人が持っている力を弱め、本人が持っている意志を歪めてしまいます。
時に、傷めさえするでしょう。
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<揺れる想い>を許さない
冒頭の記事の中でも特に引っかかったのは、
人間が体を動かすとき、「動きたい」と考えることで脳から信号が出され、神経を通して筋肉に伝わる。
HALはその「生体電位信号」を検出し、意志に沿った動きをアシストする。
という部分です。
脳の信号を受けて、動いちゃうんですか!?
だって、介護現場では、「迷い」や「駆け引き」に溢れています。
「いま、手を引いていいかな?ちょっと待とうかな。」
「腰を持ち上げていいかな。少しだけ前傾姿勢になってもらおうかな。」
「少しさするだけで様子見ようかな。」
そのような「迷い」や「駆け引き」の最中に流れる脳の信号に、いちいち反応して体が動いてしまうんじゃ、まともな介護ができません。
介護現場では、想いが揺れるものです。
<揺れる想い>は、ないがしろにできないのです。
物流じゃないんだから
これが物流のように、相手が「物」であればいいと思います。
少しの力で、重い物を運べるのなら、素晴らしいです。
でも、介護は人が相手です。
感情があります。<揺れる想い>があります。
もし、<揺れる想い>をないがしろにするような介護用ロボットスーツを肯定してしまっては、相手を「物」扱いすることを肯定してしまわないでしょうか。
いや、「物」扱いするのは、相手だけではなく、介助者自身も同じです。
「物を運搬するロボット」
そのような動きが要請されてしまうのではないかと思います。
腰痛はホント、解決してほしい
とはいえ、このロボットスーツを導入する目的の一つである「腰痛の軽減」は、ホントお願いしたいところです。
僕も、中学生時代から腰痛に悩まされ続けています。
介護によって、悪化させたこともあります。
だから、テクノロジーの進化によって、腰痛が軽減されるのは、悲願といっても過言ではありません。
でも、現場の真のニーズに基づかないテクノロジーの暴走は、許すわけにはいかないのです。