「自閉症は、社会性の障害である」という言い方は、とてもシンプルで気に入った!
自閉症の中核症状は何なのか、未だに決着がついていません。
自閉症を説明する時は、いつも歯がゆい思いです。
しかし、今日読んだ雑誌のなかで、とてもいい文章を見つけました。
自閉症の場合、知的障害がなくても、認知能力のパラっきはあり、中核となる社会性の発達の障害においては困難な側面を持続していく。
辻井正次 「NPOの立場から」 / 『そだちの科学』第1巻
自閉症の中核症状は、社会性の障害である。
実にシンプルでいいですね!
自閉症は、個体としての個人だけに原因があるのではなく、社会との関わり方、つまり社会性が問題なんだということです。
最近は、自閉症は脳機能の障害であるという言い方も多いのですが、言い切っていいものでしょうか。
たしかに、脳機能の不具合は、自閉症の要因にはなり得ます。
しかし、自閉症=脳機能障害、とは言えません。
自閉症は、社会性の障害である。
こう言っておくのがいいでしょう。
いやむしろ、こうして、脳機能障害説へは、意図的に対決しておく必要すら感じます。
そうすべき3つの理由を挙げておきます。
①事実ベースとして
自閉症の診断は、CTスキャンやMRIの所見によっておこなうわけではありません。
脳機能は調べないのです。
何で判断するかというと、行動の特徴です。
ある行動の特徴を併せ持つと、自閉症と見なされるのです。
そしてなぜ特徴的な行動をとるかというと、それは個人と社会(他者や環境)との関係において、そのような行動が現れるのです。
よって、事実として、自閉症は社会性の障害ですと言っておくのがいいでしょう。
②政治ベースとして
自閉症は対人関係において、配慮が必要です。
逆に言えば、配慮があれば一緒に一緒に過ごせるのであり、社会がどのように配慮するのかが問われます。
しかし、自閉症の原因が脳機能障害だとすると、すぐさま医療の問題とされてしまいます。
あるいは、福祉の問題だとされます。
つまり、医療や福祉の領域に分断され、排除されるのです。
これは、学齢期においては、エリート教育という言葉が出て来た時に、要注意です。
対人関係で問題を起こしがちな子は、自閉症とか発達障害ということにし、いとも簡単に排除されてしまうからです。
政治的な文脈でも、注意しなければなりません。
③支援関係ベースとして
特徴的な行動がトラブルになった時、そのトラブルの原因は、様々な要因が考えられます。
しかし、脳機能障害説の場合、原因は自閉症児者の脳機能ということになります。
支援者との間において、問題があっても、自閉症者<個体>の問題となるのです。
自閉症が社会性の障害であれば、対人関係で起こる問題は、<やりーとり>の問題です。
自閉症児者からのコミュニケーションの<やり>方であったり、支援者の<とり>方であったり。
あるいは、支援者からのコミュニケーションの<やり>方であったり、自閉症児者の<とり>方であったり。
あくまでも、<やりーとり>の問題なのです。
トラブルの要因を一方的に押し付け、支援者でありながら自らを省みないなんていう、支援関係を貧困にさせるような事態は避けなくてはなりません。
さいごに
自閉症は行動の特徴であり、社会の捉え方次第でいくらでも診断の範囲が変わるものです。
自閉症の語られ方に、注意していきたいです。
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